2011年3月のアーカイブ

最後のポイントとして、ポートフォリオ運用では、定期的に「リバランス」をすることが重要です。

 

リバランスとは、ポートフォリオ運用を行う際に相場の変動によって変化した投資配分の比率を、ポートフォリオの一部を売ったり、買い増したりして、元の比率に戻すことをいいます。例えば、当初4つの商品を25%ずつ均等に組み合わせて分散投資を始めても、値上がり、値下がりによってその比率は変化していきます。それを、当初設定した比率に意識的に修正するのがリバランスです。リバランスを1年に1~2回程度行うと、さらにマイナスを被りにくくなり、リターンの向上につながる可能性が高くなります。

 

リバランスと対照的な比率変更の考え方として、「リアロケーション」があります。日本株による運用が好調なのでさらに比率を高めるというように、相場の状況を見極めて、機動的に各資産への投資比率を変更するという方法です。一見、合理的に思えるこの方法では、結局は運用成果は相場次第というポートフォリオに変更することになり、大きなマイナスを被る可能性を高めることにつながりかねません。自分自身の相場観を持つ、投資の中~上級者になって初めて行うことと思っておいた方がいいでしょう。

 

個人投資家がマネーゲームに翻弄されないためには、感覚的に「いまが買いだ」と判断して集中投資をするのではなく、戦略的な資産形成を考えなければいけません。そうすれば、株式相場の下落局面でも慌てずに投資を続けることができるからです。失ってはいけない、まとまったお金の運用を考えるのであれば、少なくとも12年かけて、じっくりと「負けにくい」ポートフォリオを構築するべきだといえるでしょう。(完)

地震と津波によって被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

実は、私は日本FP協会の東北ブロック主催のFP向け研修会の講師として35日に仙台に行っておりました。

研修会には東北6県から7080名のFPの方々が参加されていたのですが、現状ではその方々とまったく連絡が取れず、安否を確かめることもできません。

TVが被災地の様子を映し出すたびに、あまりの被害の大きさに心が痛みます。

今はまず、身体的な安全を確保することがすべてに優先されるべきですが、被災された方々が生活を立て直して行かれる上で、いずれ私たちFPがお役に立てる場面も訪れるものと思います。

阪神淡路大震災の時、日本FP協会は被災地でボランティアによる相談会を実施致しました。今回も同様の対応が行われるものと思います。

被災者の方々のご無事と被災地の一日でも早い復旧を、心よりお祈り申し上げます。

負けにくい状況が作れたら、具体的に金融商品を選ぶことになります。その際のポイントをご紹介しておきましょう。

 

【日本株】個別銘柄であれば、まずはグロース投資(成長株への投資)かバリュー投資(割安株への投資)かを選択します。グロース投資であれば、EPS(1株当たり利益)が100円以上、ROE(株主資本利益率)が10%以上などの条件を満たす銘柄を吟味し、バリュー投資ならば、PER12倍以下、PBR1.5倍以下などをモノサシとして具体的に見ていくことになるでしょう。個別銘柄ではなく、日本株で運用する投信を購入するならば、インデックスを上回る成果を上げることが目的のアクティブ型か、投資コストが低めのインデックス(パッシブ)型のいずれにするかの選択から始めます。

 

【外国株】まずは、日本株同様に個別銘柄か投信かを選択します。個別企業の情報収集が難しいことを考えると、一般的には投信を利用する方が無難でしょう。投信であれば、先進国の株式に投資するものか、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとした新興成長国の株式に投資するものかを選択し、さらにアクティブ型かインデックス型かを決めることになります。

 

【日本債券】日本債券を購入するポイントとしては、①短期債か長期債か、②格付けが高いか低いか、③現物の債券か投信か、の3点が挙げられます。

 

【外国債券】外国債券を買う場合、米ドル、ユーロ、豪ドルあるいは他の国の通貨といった、どの国の通貨建てのものかを選択することから始めます。さらに、先進国の国債や格付けの高い社債など、リスクも利回りも低めの債券を選ぶのか、それとも反対に低格付けだが高利回りのハイイールド債やエマージング債(発展途上国の国や企業が発行する債券)を選ぶかを決める必要があります。

 

なお、ポートフォリオ運用で海外投資を行う場合の基本セオリーとしては、株式投資は成長性を重視して新興国中心に、債券投資は安定性を重視して先進国中心ということを覚えておきましょう。

 

(6)へ続く

勝つ投資信託.JPG今週末、全国の主要書店に~「勝つ投資信託」良いファンド悪いファンドの見分け方~という本が並ぶ予定です。

出版社は朝日新聞出版、新書版で定価700円+消費税と、お手頃な価格設定になっています。

 

セミナーや研修でよくお話ししている、シャープレシオというすぐれたモノサシを用いて、良いファンドと良くないファンドを区別する方法を中心に、アセットクラス(投資対象)ごとのすぐれたファンドの実例、ファンドの組み合わせ方、インターネットを活用して良いファンドを見つける手順などについて解説してあります。

シャープレシオについて詳しく解説している類似書はなく、現在投資信託を保有している方、これから投資信託を買おうと考えている方は必読です。

きっと「読んでよかった」と思っていただけることと思います。

 

また、金融機関や証券会社などで投資信託の販売に携わっている方にとっては、プロとしての必須知識といえる内容ですので、ご一読をおすすめします。

私の研修を受けられた経験のある方々には良い復習の機会になると思います。

個人投資家が「時間」を武器として利用しようとすると、同時に強力な味方を得ることができます。それが「複利効果」です。「複利効果」は、投資によって得られた収益を再度、投資元本に組み入れて運用することで得られるものです。長期保有では特に「複利効果」が力を発揮します。しかし、値動きがあるものへの投資では価格が必ず上げ下げするため、複利運用を行う場合、プラスとマイナスの両方の複利効果が出てきてしまいます。資産運用では、このマイナスの複利効果が大敵となるのです。

詳しくは入門講座⑤をご覧ください。

 

通常、株式投資だけを行うと、株価が上げ下げを繰り返すなかで、「下げ」の状態のときにマイナスの複利効果が働き、資金が大きく減ってしまうことになります。

長期運用で複利効果を味方につけるには、勝ち負けを繰り返さないこと、特に大きなマイナスを被らないことが肝心なのです。

 

以上の3つのポイントを押さえた投資方法として、私は長期的な国際分散投資をおすすめします。「負けにくい資産運用」を実践しようとする場合には、いかに負けにくい状況を作り出すのかが重要になってきます。そのためには集中投資ではなく、値動きの違う商品を意識的に組み合わせることが望ましいのです。具体的には、日本株、外国株、日本債券、外国債券、の4つを基本とし、これにREIT(不動産投信)や商品(コモディディ)などを加えた組み合わせです。

 

運用資金をいくつかの投資対象に分けて投資し、それぞれの比率を決めたときに、負けにくい状況が作られたことになります。性質が違う複数の商品に同時に投資することで、安定的に収益を上げることができる、いわゆる「ポートフォリオ運用」が個人投資家でも可能になるわけです。

 

(5)へ続く