2012年12月のアーカイブ

12)これまでは為替ヘッジありタイプが勝ち組だった。 が、・・・

 

前回はモーニングスター社の「ファンドランキング」機能を利用し、シャープレシオが高めの外債ファンドを抽出しました。

 

 

そこで目を引いたのが、過去10年間でシャープレシオが高かった上位20銘柄のうち17銘柄が為替ヘッジあり(為替リスクを回避する)タイプだったことです。

 

期間を5年間、3年間と変えてみても、いずれの期間も上位20銘柄はすべてヘッジありタイプになっていました。

 

 

その理由は、この10年間で進行した円高です。

 

例えば、米ドルは10年前の119円から80円割れまで、ユーロは126円から100円割れの水準まで円高が進みました。

 

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FPアソシエイツ作成

 

 

 

その結果、外貨建ての外国の債券や株式に投資を行う投信は、軒並み運用実績が悪化しました。

 

例えば、前回取り上げた3銘柄のヘッジありタイプとヘッジなしタイプとで過去10年間のリスクとリターンを比較してみると、下表のように3銘柄ともヘッジありタイプの方がリスクはより小さく、リターンはより高かった(=シャープレシオが高かった)ことがわかります。

実践編(12)_2.bmp

MPIスタイラスにて作成

 

ヘッジありタイプは為替の影響を受けないため、円高による差損を被ることはありませんが、逆に円安時の差益を得ることもできません。

また、投資対象国の金利が日本より高いと、ヘッジのためのコストがかかり、その分運用成績は低下するというデメリットがあります。

金融危機以降の円高局面では、世界的に金利が低下してヘッジコストが軽減されたこともあり、現時点まではヘッジありタイプの投信の方が好成績を収めてきました。

 

 

ただし、円安傾向が見られた20022007年の5年間だけを比較すると、下表のとおり両者のリターンの位置が逆転し、この期間のシャープレシオはヘッジなしタイプが上回っていました。

 

投資対象が外国の債券や株式などの場合、為替ヘッジありタイプとなしタイプが混在する中で、為替の動向によってシャープレシオが高い銘柄が大きく入れ替わる可能性があるわけです。

 

実践編(12)_3.bmp

MPIスタイラスにて作成

 

 

これまでは勝ち組といえるヘッジありタイプの投信が、3年後、5年後も勝ち組であり続けるとは限りません。

 

ヘッジありタイプとヘッジなしタイプの切り替え(スイッチング)ができるものであれば、中長期的な為替の動向を予測し、乗り換えていくことが可能です。

 

先行きの予測が難しいと思われる場合には、両タイプに資金を分けて投資するという方法もあるでしょう。

 

 

次回は、ご参考までに当社の為替の動向についての見方をご紹介してみましょう。

 

 

(13)へ続く

 

 

11)シャープレシオを使って投信を分析してみよう

 

これまでご説明したシャープレシオを使って、実際に投信を分析してみましょう。

 

今回はモーニングスター社のサイトにある「ファンドランキング」機能を利用し、海外債券に投資を行う投信を見てみます。

 

具体的な手順は以下の通りです。

 

     モーニングスター社のサイトを開く

 

     トップ画面の左上にある「ファンドランキング」をクリックする

 

     画面上部にある5つのタグの中から「シャープレシオ」を選択

 

     分類は「国際債券型」を選択

 

     期間は「10年間」を選択

 

 

過去10年間でシャープレシオの数値が高かった上位20銘柄が一覧表示されます。

 

⑤の期間を5年間、3年間などに変えて銘柄を見比べ、複数の期間でこの表に入っていれば、比較的運用が上手な投信と考えていいでしょう。

 

 

例えば、10月末時点のデータを見ると、過去10年間でシャープレシオがトップ5に入っていた投信のうち、過去5年間、過去3年間にも登場したものが3銘柄ありました。

 

各々の過去10年間の年率リターン、リスク、シャープレシオは以下の通りです。

 

実践編(11).bmp

投信1)は米国の公社債に3割ほど、残りはその他の先進国や新興国の公社債、ハイ・イールド債などに投資するものです。

 

投信2)も同様に先進国や新興国の公社債、ハイ・イールド債などにも投資していますが、米国の公社債が5割強を占めています。

 

一方、投信3)は米国の投資適格社債(BBB格以上)のみに投資を行うものです。

 

 

3銘柄のシャープレシオにはあまり大きな差がありませんが、年率リターンと年率標準偏差(リスク)についてはかなり大きな差があり、特に投信3)のリターンとリスクは、投信2)の約2分の1、投信1)の約3分の1だったことがわかります。

 

投信3)は格付けが高めの債券のみに投資をするため、リターンが低い分、損失が出ても小さめですが、投信1)と投信2)は投機的格付け(BB格以下)の債券も組み入れているため、高いリターンを得ることがある反面、損失もより大きくなる可能性が高いといえます。

 

 

どの投信を選択すべきかは、投資信託の選び方<実践編>8)にも書きましたが、一般的には、個々の投資家が求める期待リターンとリスク許容度の2点を勘案して決めることになります。

 

つまり、高めの収益を目指す人や、マーケットが上昇局面に入ると予想する人であれば投信1)あるいは2)を、リターンは低めでもいいからリスクを抑えて長期的にじっくり運用して行きたいという人なら投信3)を選ぶということになるでしょう。

 

 

また、上記3銘柄はすべて「為替ヘッジあり」タイプ、つまり為替リスクを回避するタイプの投信です。

 

実はシャープレシオの上位20銘柄のほとんどが為替ヘッジありタイプとなっています。

 

次回はこの点に焦点を当てて、お話ししてみたいと思います。

 

 

 

(12)へ続く