2013年6月のアーカイブ

昨年6月にスタートし、私が専門委員の一人として参加していた金融審議会の保険ワーキング・グループでの議論が終了し、ようやく報告書が出来上がりました。

 

不妊治療のための保険や現物支給型の保険については、マスメディアなどの注目度も高く、さまざまな切り口からの議論が繰り返し行われました。

 

また、金融機関や大規模な来店型ショップを代表とする乗合い代理店の保険販売のあり方については、保険契約者に誤認が生じにくいようにメスが入れられることになりました。

 

1年、16回の会議を経てまとめられた報告書の内容は、バランスのとれたものになったのではないかと思います。

 

金融庁のHPで報告書の内容は確認できますので、ご興味がある方は読んでみて下さい。

今後のわが国の保険商品とその販売方法の方向性を決めるこのWGに、FPを代表する形で参加できたことはたいへん貴重な経験でした。

 

この報告書の内容を基に、今後行われるであろう法律の改正や新商品の開発を待ちたいと思います。

 

 

本WGと併行して開催されていた、同じく金融庁主催の「金融経済教育研究会」のメンバーも勤めていたのですが、こちらの研究会の目的は一言で言えば、日本人のマネー関連の知識とスキル向上を図る方策の提言でした。

 

額に汗して働くだけでは収入の伸びが期待しにくくなりつつある日本人にとって、今後マネー関連の知識やスキルが必須のものとなる可能性が高いというこうことは、皆さんもお感じのことかと思います。

 

こちらの報告書もすでに金融庁のホームページでご覧頂くことができますが、必要となる知識・スキルを具体的に15項目にまとめたところが最大の成果だと思っています。

 

今後は、日本銀行(金融広報中央委員会)の中に先日立ち上げられた、金融経済教育推進会議の中で、教材作りの作業が進んでいく予定です。

 

引続き、この会議の委員にも任命されましたので、生活者にとってわかりやすいカリキュラムの作成に、積極的に携わって行きたいと思います。

 

成果などについては、いずれまた、ご報告しようと思っています。

 

14) さまざまな指標を活用して投信を分析しよう

 

投資信託の運用の巧拙を評価する指標として、これまで「シャープレシオ」を説明してきました。

 

シャープレシオの情報は、現在では投信評価会社などのサイトで簡単に確認できるため、皆さんが利用しやすい指標のひとつになっています。

 

 

シャープレシオ以外にも投信の運用実績を評価する指標はいくつかあります。

 

例えば、当社がお客さまが保有しているファンドの分析の際に活用している「キャプチャーレシオ」もそのひとつです。

 

 

キャプチャーレシオとは、ベンチマークの上昇時(または下降時)に、各投信の価格がどれだけ上昇(または下降)したかをパーセンテージで表したものです。

 

単純化した例として、ベンチマークが10%上昇した期間に、投信A12%上昇した場合には、その投信の上昇相場でのキャプチャーレシオは120%となります。

 

逆に、ベンチマークが10%下降した同じ期間にその投信が11%下落したら、下降相場でのキャプチャーレシオは110%となるわけです。

 

 

下図は、実際の日本株投信3本を過去5年間のTOPIXに対するキャプチャーレシオで比較したグラフです。

 

実践編(14)_1.bmpのサムネール画像

 

投信Aは相場上昇時にはベンチマークの1.8倍上昇した一方、下降時にはベンチマークと同程度しか下落しなかったことがわかります。

 

 

投信Bは相場上昇時にはベンチマークよりも上昇し、下降時にはベンチマークの7割程度しか下落しなかったということです。

 

 

逆に投信Cは、相場上昇時にはベンチマークの上昇率に劣り、下降時にはベンチマークより大きく下落したということを表しています。

 

 

分析期間を変えながら見てもこの傾向が同一ということであれば、もしも投信Cを保有しているならば、これを売却し、投信Aまたは投信Bに乗り換えるべきといえるでしょう。

 

 

最近のように、マーケットが大きく上昇したり下降したりする状況では、投信の運用の巧拙を見極める上で、たいへん有効なモノサシといえるでしょう。

 

 

当社では、いくつかの指標を組み合わせて利用しながら、お客さまにお薦めする投信を選定しているわけですが、皆さんも入手できる範囲のさまざまな指標を駆使して、多面的に投信を分析してみるといいと思います。