<投資観とは何か>
長期的にお金にも少しは働いてもらおうという「仕事としての運用」を行うためには、まず「長期」、「分散」、「積立」が何故重要なのかということをしっかり理解しておく必要があり、「趣味としての投資」との違いを認識した上で商品選択を行わねばなりません。
私はそれらについての考え方を総称して、「相場観」に対する言葉として「投資観」と呼んでいます。
■なぜ長期投資なのか
長期投資を行うべき最大の理由は、投資対象の成長には、ある程度の時間が必要だからです。
短期の売買では、利益を得る人の裏側には、損失を被る人がいるという、ゼロサム(誰かの儲けは、売った人が儲けそこなった分で、合計するとプラス・マイナス・ゼロになる)ゲームでの勝者を目指そうとする投機的な行為になりがちです。
しかし、長期的に成長し、価値が増していく企業などに投資を行えば、ある程度時間はかかるでしょうが、その企業の株主全員が利益を得ることができます。
これは企業の成長によって、投資している対象の価値がプラスサム(合計がプラス)になるからです。
投資の本質は成長にあり、成長する可能性が高いものに資金を投じてプラスサムになるのを待つ長期投資スタイルこそが、情報量や資金量ではプロにかなわない立場で、資産形成を目指す個人投資家にとって王道と言われる理由なのです。
(詳しくは入門講座の④をご参照下さい。)
■なぜ分散投資なのか
長期投資を行う場合に重要となるのが「複利効果」です。
運用期間が長くなるほど、複利の効果は高まります。
この複利効果を味方につける際にポイントになるのが、価格のブレ(リスク)の大きさです。
ブレの大きな運用では値下がり時に複利効果がマイナス側に働いてしまい、せっかく積み上げてきた資産を大きく減らしてしまうことにもなりかねません。
マーケットの状況に応じて儲かりそうなものを見つけようとすること以上に、値下がりに備えるためにできるだけブレを抑えた運用を心がけるべきなのです。
リスク・テイクを行う趣味の投資では、儲かりそうもないものに投資するなどということは考えもしないでしょうが、ブレを抑える(=リスクをコントロールする)ためには、儲かりそうなものだけでなく、あえて儲かりそうもないものを組み合わせたり、値動きの異なる複数の投資対象に分散して投資を行うことが最も重要なポイントになります。
それが分散投資を行うべき理由なのです。
(詳しくは入門講座⑤をご参照下さい。)
■なぜ積立投資なのか
いくら分散して長期的に運用を行うとしても、価格が高い時期にまとめて購入してしまうと、その後の値下がりを挽回するのに時間がかかってしまい、運用の成果も期待しにくくなります。
値上がりしそうなものを当てに行こうとする「趣味としての投資」であれば、安くなるのを待ってまとめ買いすることを考えるのでしょうが、いつが高いか安いかの判断や将来の価格の動きを予測することはプロでも難しいので、購入する時期を分けることが高値掴みを避けて、そこそこの運用リターンを目ざす「仕事としての運用」では、シンプルでありながらたいへん有効な方法になります。
また、投資を行った後に価格が下落を始めるとどうしても暗い気分になりがちですが、定時・定額買付け方式の積立投資であれば、価格が下がるとたくさん買えることになります。
その後に投資対象の成長に伴って価格が上昇を始めると、比較的早いうちから利益が出始めるのが積立投資の特徴といえます。
(詳しくはNISAの活用法(1)をご参照下さい。)
つまり、価格の下落時にはたくさん買えていると考えればいいわけで、値下がりに対する心理的なストレスをあまり強く感じなくてすむはずです。
運用に不慣れな投資の初心者にとっても始めやすい投資方法といえ、実は、定額買付けのスタイルは「仕事としての運用」にマッチしていると言えるのです。