◎パンデミックによる株価暴落は未知のでき事
今年2月、北イタリアでの新型コロナウイルスの感染者急増をきっかけに、世界的に株価が暴落しました。今回の株価暴落は、私がこれまで経験した暴落とは全く性質が違うものといえるでしょう。従来の株価暴落というのは、リーマンショックなどもそうだったように、マーケットの中に何らかの原因があり、それによって引き起こされたものでした。
そうした暴落は、それなりに多くの人が経験してきたわけですが、今回のパンデミックによるこれほどの株価下落というのは誰も経験がありませんでした。コロナ問題の広がりや終息について先が読めないということもあり、驚きが恐怖に変わりながら暴落も世界中に広がっていきました。
経済を下支えしようと各国が行った大型の経済政策や金融緩和策により、株価は持ち直しつつありますが、これはかつてない規模の資金余剰状態を作り出し、その結果、行き場のないお金が債券と比べれば株式の方がまし、というような形で動いている状況といえるでしょう。コロナ禍自体はまだ全く終息のめどが立っていないわけで、いったん持ち直したとはいえ、マーケットの先行きが不透明な状況であることに変わりはありません。
◎個人の投資・運用への影響
こうしたマーケットの状況は、当然、個人の資産運用や投資にも影響を及ぼしますが、その影響は投資・運用のスタイルにより異なってきます。
以前もお話ししましたが、個人が行う投資や運用には、主に2つのスタイルが考えられます。一つのスタイルは、自分の相場観で、面白い、儲けたいと思って行う投資、いわば「趣味としての投資」。そしてもう一つのスタイルは、自分が頑張って働くのと同時に、ある程度はお金にも働いてもらいたいと思い行う、「仕事としての運用」です。
「趣味としての投資」を行っている人の中には、ボラティリティが高まった2月以降のマーケットの状況を、儲けるチャンスと捉えている人も少なくないでしょう。たとえ失敗して損を出しても、それを趣味にかかったコストとして支払っても仕方ないと考えられるのであれば、問題ないと思います。
一方、投資自体にはそれほど関心はないが、老後資金などへの不安もあり、お金にも働いてもらいたいという「仕事としての運用」を行っている人にとっては、今回のコロナ問題は迷惑以外の何物でもないはずです。
なぜなら、「仕事としての運用」の基本は長期国際分散投資であり、そのリターンの源泉は世界経済の成長だからです。ところが国際機関などの成長率予測を見ると、コロナショックにより今後しばらく、世界の経済成長は期待できないどころか、マイナスになることが予想されています。
そういった低成長時代にも「仕事としての運用」を継続すべきなのか、継続する場合には具体的にどう運用していけばいいか。これらの点については、次回お話ししたいと思います。