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14) さまざまな指標を活用して投信を分析しよう

 

投資信託の運用の巧拙を評価する指標として、これまで「シャープレシオ」を説明してきました。

 

シャープレシオの情報は、現在では投信評価会社などのサイトで簡単に確認できるため、皆さんが利用しやすい指標のひとつになっています。

 

 

シャープレシオ以外にも投信の運用実績を評価する指標はいくつかあります。

 

例えば、当社がお客さまが保有しているファンドの分析の際に活用している「キャプチャーレシオ」もそのひとつです。

 

 

キャプチャーレシオとは、ベンチマークの上昇時(または下降時)に、各投信の価格がどれだけ上昇(または下降)したかをパーセンテージで表したものです。

 

単純化した例として、ベンチマークが10%上昇した期間に、投信A12%上昇した場合には、その投信の上昇相場でのキャプチャーレシオは120%となります。

 

逆に、ベンチマークが10%下降した同じ期間にその投信が11%下落したら、下降相場でのキャプチャーレシオは110%となるわけです。

 

 

下図は、実際の日本株投信3本を過去5年間のTOPIXに対するキャプチャーレシオで比較したグラフです。

 

実践編(14)_1.bmpのサムネール画像

 

投信Aは相場上昇時にはベンチマークの1.8倍上昇した一方、下降時にはベンチマークと同程度しか下落しなかったことがわかります。

 

 

投信Bは相場上昇時にはベンチマークよりも上昇し、下降時にはベンチマークの7割程度しか下落しなかったということです。

 

 

逆に投信Cは、相場上昇時にはベンチマークの上昇率に劣り、下降時にはベンチマークより大きく下落したということを表しています。

 

 

分析期間を変えながら見てもこの傾向が同一ということであれば、もしも投信Cを保有しているならば、これを売却し、投信Aまたは投信Bに乗り換えるべきといえるでしょう。

 

 

最近のように、マーケットが大きく上昇したり下降したりする状況では、投信の運用の巧拙を見極める上で、たいへん有効なモノサシといえるでしょう。

 

 

当社では、いくつかの指標を組み合わせて利用しながら、お客さまにお薦めする投信を選定しているわけですが、皆さんも入手できる範囲のさまざまな指標を駆使して、多面的に投信を分析してみるといいと思います。

 

13) シャープレシオを使って投信を分析してみよう(その2)

 

実践編(11)では、モーニングスター社の「ファンドランキング」機能を使い、外債ファンドのシャープレシオを比較しましたが、今回はイボットソン社が提供する「投信まとなび」のサイトにある投信検索機能を利用し、複数のREIT(不動産投資信託)に投資を行うREITファンドを比較してみたいと思います。

 

 

具体的な手順は以下の通りです。

 

 ①     「投信まとなび」のサイトを開く

 

 ②     トップ画面の上部に並んでいる6つのタグの中から「投信検索」を選択

 

 ③     「上級者の方はこちら」の右横にある「GO」ボタンをクリック

 

 ④     「条件指定検索」画面のイボットソン・ファンド分類から「REIT」の項目をすべて選択し、「この条件で検索」ボタンをクリック

 

 ⑤     「検索結果」画面上部にある「全般▼」ボタンをクリックし、「評価」を選択

 

 ⑥     「シャープレシオ」の「5年」ボタンをクリックし、数値が高い順に並べ替える

 

 

過去5年間でシャープレシオの数値が高かったものから順に表示されます。

 

⑥で期間を「3年」、「1年」に変えてみて見比べ、複数の期間で上位に入っていれば、運用が上手だった投信と考えていいでしょう。

 

 

例えば、3月末時点のデータを見ると、過去5年間でシャープレシオがトップ20に入っていた投信のうち、過去3年、過去1年でも登場したものが4銘柄ありました(ラップ口座専用銘柄や確定拠出年金専用銘柄は除いています)。

 

各々の過去5年間の年率リターン、リスク、シャープレシオは以下の通りです。

 

実践編(13)_1.bmp 

投信1)3)は、J-REIT(国内の不動産投信)ファンドで、4)だけが海外のREITファンドでした。

 

4)は、シンガポールのREIT6割、香港のREIT3割ほど投資を行うファンドです。

 

一般的に、海外のREITファンドの方が為替変動の影響を受ける分、J-REITファンドに比べてリスクは大きめになる傾向があります。

 

 

リーマン・ショック以降、大きく落ち込んだ各国のREIT市場は少しずつ回復してきていましたが、昨年末からJ-REIT市場全体が急激に上昇したことから、J-REITファンドがシャープレシオのランキングでは上位を占める結果となっています。

 

 実践編(13)_2.bmp

MPIスタイラスを使いFPアソシエイツが作成

 

 

この背景には、金融緩和により長期金利が低下してきたことに加え、不動産市況の回復への期待感が強く、分配金による安定した収益を求める金融機関や投資信託を経由しての個人の購入が増えていることがあるようです。

 

また、日銀による買い入れの拡大など、政策面での後押しの効果も大きいでしょう。

 

ただし、アベノミクスによるインフレへの期待感が先行して価格を押し上げている面もあり、今後、実際の不動産の価格や賃料が期待通りに上昇していかないような場合には、価格が下落する可能性もあります。

シャープレシオや騰落率などの指数を比較しようとする場合には、期間をずらしてみながら検証するなどの工夫が必要になるでしょう。

 

(14)へ続く

12)これまでは為替ヘッジありタイプが勝ち組だった。 が、・・・

 

前回はモーニングスター社の「ファンドランキング」機能を利用し、シャープレシオが高めの外債ファンドを抽出しました。

 

 

そこで目を引いたのが、過去10年間でシャープレシオが高かった上位20銘柄のうち17銘柄が為替ヘッジあり(為替リスクを回避する)タイプだったことです。

 

期間を5年間、3年間と変えてみても、いずれの期間も上位20銘柄はすべてヘッジありタイプになっていました。

 

 

その理由は、この10年間で進行した円高です。

 

例えば、米ドルは10年前の119円から80円割れまで、ユーロは126円から100円割れの水準まで円高が進みました。

 

実践編(12)_1.bmp

FPアソシエイツ作成

 

 

 

その結果、外貨建ての外国の債券や株式に投資を行う投信は、軒並み運用実績が悪化しました。

 

例えば、前回取り上げた3銘柄のヘッジありタイプとヘッジなしタイプとで過去10年間のリスクとリターンを比較してみると、下表のように3銘柄ともヘッジありタイプの方がリスクはより小さく、リターンはより高かった(=シャープレシオが高かった)ことがわかります。

実践編(12)_2.bmp

MPIスタイラスにて作成

 

ヘッジありタイプは為替の影響を受けないため、円高による差損を被ることはありませんが、逆に円安時の差益を得ることもできません。

また、投資対象国の金利が日本より高いと、ヘッジのためのコストがかかり、その分運用成績は低下するというデメリットがあります。

金融危機以降の円高局面では、世界的に金利が低下してヘッジコストが軽減されたこともあり、現時点まではヘッジありタイプの投信の方が好成績を収めてきました。

 

 

ただし、円安傾向が見られた20022007年の5年間だけを比較すると、下表のとおり両者のリターンの位置が逆転し、この期間のシャープレシオはヘッジなしタイプが上回っていました。

 

投資対象が外国の債券や株式などの場合、為替ヘッジありタイプとなしタイプが混在する中で、為替の動向によってシャープレシオが高い銘柄が大きく入れ替わる可能性があるわけです。

 

実践編(12)_3.bmp

MPIスタイラスにて作成

 

 

これまでは勝ち組といえるヘッジありタイプの投信が、3年後、5年後も勝ち組であり続けるとは限りません。

 

ヘッジありタイプとヘッジなしタイプの切り替え(スイッチング)ができるものであれば、中長期的な為替の動向を予測し、乗り換えていくことが可能です。

 

先行きの予測が難しいと思われる場合には、両タイプに資金を分けて投資するという方法もあるでしょう。

 

 

次回は、ご参考までに当社の為替の動向についての見方をご紹介してみましょう。

 

 

(13)へ続く

 

 

11)シャープレシオを使って投信を分析してみよう

 

これまでご説明したシャープレシオを使って、実際に投信を分析してみましょう。

 

今回はモーニングスター社のサイトにある「ファンドランキング」機能を利用し、海外債券に投資を行う投信を見てみます。

 

具体的な手順は以下の通りです。

 

     モーニングスター社のサイトを開く

 

     トップ画面の左上にある「ファンドランキング」をクリックする

 

     画面上部にある5つのタグの中から「シャープレシオ」を選択

 

     分類は「国際債券型」を選択

 

     期間は「10年間」を選択

 

 

過去10年間でシャープレシオの数値が高かった上位20銘柄が一覧表示されます。

 

⑤の期間を5年間、3年間などに変えて銘柄を見比べ、複数の期間でこの表に入っていれば、比較的運用が上手な投信と考えていいでしょう。

 

 

例えば、10月末時点のデータを見ると、過去10年間でシャープレシオがトップ5に入っていた投信のうち、過去5年間、過去3年間にも登場したものが3銘柄ありました。

 

各々の過去10年間の年率リターン、リスク、シャープレシオは以下の通りです。

 

実践編(11).bmp

投信1)は米国の公社債に3割ほど、残りはその他の先進国や新興国の公社債、ハイ・イールド債などに投資するものです。

 

投信2)も同様に先進国や新興国の公社債、ハイ・イールド債などにも投資していますが、米国の公社債が5割強を占めています。

 

一方、投信3)は米国の投資適格社債(BBB格以上)のみに投資を行うものです。

 

 

3銘柄のシャープレシオにはあまり大きな差がありませんが、年率リターンと年率標準偏差(リスク)についてはかなり大きな差があり、特に投信3)のリターンとリスクは、投信2)の約2分の1、投信1)の約3分の1だったことがわかります。

 

投信3)は格付けが高めの債券のみに投資をするため、リターンが低い分、損失が出ても小さめですが、投信1)と投信2)は投機的格付け(BB格以下)の債券も組み入れているため、高いリターンを得ることがある反面、損失もより大きくなる可能性が高いといえます。

 

 

どの投信を選択すべきかは、投資信託の選び方<実践編>8)にも書きましたが、一般的には、個々の投資家が求める期待リターンとリスク許容度の2点を勘案して決めることになります。

 

つまり、高めの収益を目指す人や、マーケットが上昇局面に入ると予想する人であれば投信1)あるいは2)を、リターンは低めでもいいからリスクを抑えて長期的にじっくり運用して行きたいという人なら投信3)を選ぶということになるでしょう。

 

 

また、上記3銘柄はすべて「為替ヘッジあり」タイプ、つまり為替リスクを回避するタイプの投信です。

 

実はシャープレシオの上位20銘柄のほとんどが為替ヘッジありタイプとなっています。

 

次回はこの点に焦点を当てて、お話ししてみたいと思います。

 

 

 

(12)へ続く

 

 

10)シャープレシオはネットで調べよう

 

すでに述べたように、シャープレシオをわざわざ自分で計算する必要はありません。

 

投信評価会社などのサイトで簡単にチェックすることができます。

 

また、最近ではこうしたサイトでシャープレシオを基準にした投信のランキングなども公表されています。

 

ここでは3つのサイトをご紹介しておきましょう。

 

 

① モーニングスター社のサイト

 

投信評価会社であるモーニングスター社のサイトでは、シャープレシオを含む個別の投信に関する情報だけでなく、リターンやシャープレシオなどを基準にした投信のランキングも見ることができます。

http://www.morningstar.co.jp/fund/

 

 

 ●個別銘柄の情報

 

 トップから「投資信託」のタグを選び、「ファンド検索」で調べたい投信の銘柄を入力すれば、 

 個別の投信情報を見ることができます。

 

 最長10年間のリターン、リスク(標準偏差)、シャープレシオなどの数値や同分類内での順 

 位、ファンドの特色などが掲載されています。

 

 その他のタグでは、分配金やコストに関する情報などが見られ、またチャートのタグでは、基

 準価額やリターンなどのデータが日次、週次、月次ベースでダウンロードできるようになってい

 ます。

 

 

 ●投信のランキング

 

 投資信託の画面の左端にある「ファンドランキング」をクリックすると、「シャープレシオ」はもち

 ろんのこと、「リターン」「モーニングスターのレーティング」「コスト」「純資産」といった切り口で見

 た上位20銘柄のランキングが掲載されています。

 

 さらに、それぞれの切り口で、現時点、1週間、1か月間、1年間、3年間、5年間と、異な

 る期間のランキングも確認できます。

 

 

② イボットソン・アソシエイツ・ジャパン社のサイト

 

投信情報会社のイボットソン社が提供する投信の情報ポータルサイト「投信まとなび」では、投資の初心者、中級者、上級者に分けてファンドの検索ができるようになっています。

http://www.matonavi.jp/news/

 

初心者に対してはまず資産運用に関する解説を行い、質問に回答すると、その投資家に相応しいと考えられる投信を絞り込みます。

 

中級者向けの画面では、投資地域、投資資産、リスク・リターン別に投信の検索ができます。

 

上級者向け画面では、リスク、リターン、シャープレシオ等の数値や運用会社、ファンド分類等を基準に、投信の絞り込みが可能になっています。

 

 

③ QUICK MoneyLifeのサイト

 

金融情報配信企業であるQUICK社が運営するQUICK MoneyLifeは、投信や個別の株式などについて役立つ情報を提供しています。

http://money.quick.co.jp/

 

HP上の「投資信託」のタグを選ぶと、個別銘柄の情報や投信実力ランキングなどを見ることができます。

 

 

ご紹介した3サイト以外にも、投資信託に関する情報を掲載するさまざまなサイトが開設されています。

 

上手に活用して、投信選びに是非役立ててください。

 

 

 

(11)へ続く